わたしたちはガラスを主な対象として研究をしています。
ガラスは結晶と違って、どれも同じようなランダムな構造をしていると思いますか?
いえいえ、いろいろな方法でその構造を変化させて、
今まで存在しなかったアモルファスの材料を創ることができるんですよ。
皆さんが日々利用するインターネットは、主にシリカガラスというSi(ケイ素)とO(酸素)から作られる光ファイバによって出来ています。光ファイバは空気よりずっと透明で、光の情報を遠くまで伝えることができます。それでも光がファイバで散乱されて弱くなるので、光を増幅する中継器が使われています。
さて、最近量子暗号や量子通信といった新しい情報の伝え方が注目され、安全な社会をつくるのに役立つことが期待されています。ところが、これらの情報は、増幅することができません。このため今までよりもっと透明で遠くまで光を伝えられる材料が必要です。当研究室では、このような材料を創る研究をしています。
右手と左手、右回りのらせん階段と左回りのらせん階段。このような、あるものが鏡に映った像ともう一方が同じ形になるような性質をキラリティと呼びます。このキラリティは原子や分子などミクロの世界にも存在しています。そして、キラリティを持った物質と光が出会うと、回転しながら進む光、“円偏光”を作ることができます。円偏光は量子通信や量子コンピューター、植物工場のLED照明まで、いろいろな場面での利用が考えられています。
当研究室では、キラリティを持ったセラミックス結晶やガラスを光らせることで、円偏光を発するような新しい発光材料の開発を目指しています。
ある結晶基板の上に物質を堆積すると、その物質の構造が下地の基板によって影響を受けます。この様な効果をトポケミカル効果と呼びます。アモルファスを結晶基板の上に堆積させても、トポケミカル効果を受けて、普通の方法でつくるときと違う物性を示す特殊なものができることがわかってきました。新しいアモルファスを作ることのできる方法として期待しています。
ガラスには、様々な機能を合わせ持つようにしたり、形状が自由に変えられるという、有用な特徴があります。例えば温度を高くするとガラスを延ばすことができるようになりますが、延ばす方向に原子構造の秩序を創ることができます。
秩序に沿った特性が生じることを利用して、ある方向にだけ光とイオンが移動するような面白い素子の創出を目指しています。
美しさは永遠の魅力です。古代のガラスには、数百年間土の中で眠っていたことによって得られた美しさをもつものがあります。このようなガラスを現代の技術力をもって再現してみよう。人は地球を模擬できるのでしょうか?!こんな研究も行っています。